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東日本大震災被災地レポート[現況調査報告 第一回] 東北地方編 緊急レポート

被災地の概況

(1) 地震・津波被害

 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東北太平洋沖地震は、主として東北地方の太平洋沿岸に来襲した津波による甚大な被害のほかに、北海道から関東地方にかけての広範囲にわたって、建物・建築物の損壊や流失、埋立地における液状化現象、鉄道・道路・ガス上下水道網などライフラインの損傷を引き起こした。
 震災による被害は東北地方を中心に東日本全域に及んでおり、死者14,133名、行方不明者13,346 名、建物損壊 316,710 戸、被害総額 25 兆円と算定されている。 また、地球規模の地殻変動により、日本列島は三陸地方を中心として、東日本一帯で地盤沈下が生じるなど、これまでの震災に類を見ない広範囲な影響が見られる。

(2) 原発事故

 福島第一原子力発電所では、地震に続いて来襲した津波によって関連施設に大きな被害を受けた事により、複数の原子炉が震災直後よりコントロールを失い、水素爆発による原子炉周辺施設の重大な損傷と放射性物質の放出により、発電所周辺に放射能汚染を引き起こしている。
 当初は、放射能汚染による短期的な健康被害の懸念から、政府による避難指示、屋内退避要請が出されたが、4月22日には、災害対策基本法に基づく、警戒区域(原発から20㎞圏内)、計画的避難区域(原発から20㎞圏外に設定)、緊急時避難準備区域 等が設定された。
 事故処理の長期化に伴い、累積放射能による被爆の懸念のため、各地域に長期に亘る「深刻な放射能汚染」を拡大しつつあるという見解もある。
 また、当該原発は首都圏の電力需要の相当部分を占めているため、震災直後から首都圏において計画停電が実施され、国内外の工業生産活動にも大きな影響を与えている。

市区町別 現地調査報告

 当レポートは、震災後の現地情報がメディアやネット上で氾濫しているなか、不動産調査・不動産鑑定評価への影響を客観的に把握するため、平成 23 年 4 月 8 日~19 日にかけて、各市町村に実査に赴いて、市区町役場や各地方法務局の状況確認、被災地の具体的な状況を調査したものである。
 被災から一ヶ月が経過し、行政機能の回復が図られ道路や電力・上下水等のライフラインも徐々に回復しつつあるとはいえ、車両通行できる程度に道路上の瓦礫撤去が行われている程度で、周辺地には多くの瓦礫や残土が放置されている有様であり、復興には相当な期間と技術的な困難が伴うと予想される。 それでも、徐々に復興体制が整ってきた岩手・宮城の両県と、原発被害が拡大しつつある福島県では相当な復興格差がある事を指摘したい。

(1) 被災地の状況把握

 地震による被害よりも、津波による甚大な被害を受けた。 特に三陸地方の海岸部は海に開けた典型的なリアス式海岸であるため、V 字谷の中央を流れる河川に沿って開けた市街地に壊滅的な被害がみられる。
 また宮城県から千葉県に至る平坦な海岸線沿いでは、海岸から数キロに及ぶ海抜の低い平坦地の深部にまで津波が到達しており、広い範囲で宅地・農地などに被害が及んでいる。
 ※ 地域ごとの被災状況については個別レポート参照ください。

(2) 役所機能の確認

 岩手・宮城両県下の市区町役場では、来襲した津波によって、庁舎損壊や資料の流失、役所職員の死亡・不明などの人的被害を受け、行政機能の全部または一部を喪失するとともに、被害実態の把握に相当の時間を要したところもあった。
 一方、福島県下においては、庁舎に対する直接被害はそれ程でなかったものの、原発事故に伴う避難措置のために、当地における行政機能を停止し、他地域に移転済みである。
 ※ 地域ごとの役所の確認内容、および移転先情報については個別レポート参照ください。

不動産価格への影響

 震災から一ヶ月、被災地においてはライフラインの復旧が図られているが、被災地の不動産市場は相当期間にわたって混乱が続くと思われる。
 被災地域では、不動産に直接的な被害が及んでいなくても、価格形成要因に様々な変化が起きている可能性があり、被災後の価格形成要因の変化を実地調査により十分把握したうえで、価格に与える影響を適切に判定することが必要となる。
 土地の場合は、被災前と同様の土地利用が可能かどうかを調査し、地盤沈下、土壌汚染、放射能汚染、などの影響を判定するとともに、被災建物の撤去やその後の震災復興事業が完了するまでの相当時間を考慮するなど、中長期的な視点を持たなければならない。
 建物の場合は、応急危険判定を受けた後にしっかりとした建物調査を行い、適切な補修を見込むことが出来れば概ね正確な判断が可能である。 しかし、被災前と同様の建物利用が将来も可能かどうか、常に復興計画の方向性と進捗を見極める必要がある。
 このように被災地の不動産評価においては、自治体単位の大雑把な地域認識するのではなく、被災地域ごとの詳細な地域分析と、それぞれ個別の不動産の現状とをしっかりと把握し、それぞれの価格形成要因に基づいた、木目細かな不動産調査と判断が必要である。
 なお、日本不動産鑑定協会では、価格形成要因の変化の有無及びその程度を判定するために必要な資料を十分に入手できない状況に鑑みて、当面の対応を発表したが、阪神淡路大震災時と同様に、国土交通省による「土地の鑑定評価にかかわる見解」が待たれる。

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