1.被災地の現状
(1) 被災その後
平成23 年3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震は、主として東北地方の太平洋沿岸に来襲した津波による甚大な被害のほかに、北海道から関東地方にかけての広範囲にわたって、建物・建築物の損壊や流失、埋立地における液状化現象、鉄道・道路・ガス上下水道網などライフラインの損傷をもたらした。
震災後、主要な部分は復旧したが、いまだ各被災地では復興の途上にあり、いまだに長期間の避難生活を余儀なくされている被災者も多い。
(2) 復興計画と進捗
被災地域の人口流出を止め、早急に産業を復興させるためには、高台移転や既存市街地の再生など、中・長期的な地域復興策を必要とするが、そのための土地利用計画には住民の合意を得ることが不可欠であり、これを如何にスムーズに進めるかが鍵である。
しかし大半の被災地域が、過疎地であること、今回の被災によって経済的な基盤が失われてしまったことに加え、防潮堤の修復や地盤沈下の問題、放射能汚染の問題などから、復興計画が思うように進まない地域もあり、中心市街地に草地が広がる風景が固定化されつつある。
2.県別 現地調査報告
当レポートでは、平成24 年10 月10 日~31 日にかけて、各県の被災地を再訪し、地元精通者から地域ごとの土地取引情報を聴取するとともに、独自の視点で不動産市況を分析した。(詳細は各県毎のレポートを参照ください。)
(1) 岩手県
沿岸部における移転需要や復興事業に伴う地価上昇は限定的である。
住宅地には、高台移転需要を反映した限定的な地価上昇が見られるが、県内全体に影響を及ぼす程ではなく、商業地の地価の反転は見られない。
(2) 宮城県
沿岸部では、物件不足から住宅地の価格は高止まりしている。商業地は、甚大な被害を被った気仙沼市・石巻市等の中心市街地の取引は乏しく、周辺部の路線商業地で地価上昇の傾向がみられる。
仙台市中心部における店舗・マンション等の賃貸需要は引き続き堅調であるが、全面的な地価上昇には至っていない。
(3) 福島県
沿岸部の津波の影響が大きかった地域よりも、放射線数値が高い地域からの人口流出が顕著である。特に子育世代は隣県に避難したまま戻ってこないなど、勤労世帯の減少による産業衰退に歯止めがかからない。県内移転需要は放射線数値に強い影響を受けている。
(4) 茨城県
他の被災県に比べて被害規模は小さいが、沿岸地域を中心とした津波被害、湖沼跡地や周辺地における液状化被害、地滑り等に伴う広範な地盤被害が見られ建物被害が大きかった。
3.不動産価格への影響
震災から20 ヶ月、被災地の復興への道は険しい。被災地の不動産市場は相当期間にわたって混乱が続くと思われ、長期的な景気動向のもと不透明感は一層増している。
被災地域では、思ったほど進捗しない復興計画、流出した人口、国内外の景気低迷を受けて、不動産価格はそれほど加熱しておらず、移転に伴う用地の不足感は地域限定的であるなど震災前の水準に戻るには程遠い状況である。
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