商業地:東京圏はほぼ横ばい、大阪圏と名古屋圏では上昇ピッチが強まる。
商業地指数の「現在」は東京圏が72.4、大阪圏が75.0、名古屋圏が80.5と、東京圏が前回の水準(71.2)からほぼ横ばいであるのに対し、大阪圏と名古屋圏は前回の水準(大阪圏65.7、名古屋圏69.5)を大きく上回った。ただし、「先行き」は東京圏が56.0、大阪圏が63.8、名古屋圏が55.6と、いずれも現在よりは慎重な見方が強まっている。
東京圏では2020年にオリンピックの開催を控え、品川や渋谷等の主要エリアでは大型の再開発事業が進行中であり、今後数年間で都市の街並みは大きく変わる。しかし、グローバル経済が進展する中、一国だけでの発展には限界があるのも事実であり、今回の調査結果は、中国経済の減速、ギリシャ問題、TPPでの交渉難航等の世界的な不安要素に起因する国際都市「東京」への投資意欲の減退が察知されたものと考えられる。
大阪圏は、東京圏とは違って長期的な地価の牽引力にはやや欠けており、特に今回の調査では都構想の断念やリニア中央新幹線の延伸遅れ等による地価への影響が懸念されていたが、調査結果は意外なものとなった。この原因として、既に地価がピークに達している東京圏やリニア効果で地価が急上昇している名古屋圏での高値買いを嫌った国内の投資マネーが大阪圏に流れ込んでいるとの見方もできるが、今後の動向を注視したい。
名古屋圏ではリニア中央新幹線の開業計画を受け、名駅エリアを中心に大型の再開発事業が目白押しである。ただし、名古屋圏の不動産市場は相対的に規模が小さく、リニア効果で地価が急上昇している感も強いため、今後の動向には十分な注意が必要である。
住宅地:三大都市圏では上昇ピッチがやや強まるが、地方圏ではやや鈍化。
住宅地指数の「現在」は東京圏が68.7、大阪圏が66.7、名古屋圏が75.0と、三大都市圏では名古屋圏を筆頭にいずれも前回の水準(東京圏64.9、大阪圏63.0、名古屋圏69.5)をやや上回った。ただし、「先行き」は東京圏が51.9、大阪圏が62.0、名古屋圏が58.3と、商業地と同様に現在よりは慎重な見方が強まっている。
東京圏や大阪圏では、外国人投資家に高値買いされたタワーマンション等がオリンピック前に売り抜けられ、値崩れすることに対する警戒感が出始めている。また、リニア効果は、住宅地に対してはそれほど影響がなく、始発駅となる品川駅と名古屋駅の周辺でマンション需要が高まっていることや、山梨県、長野県及び岐阜県における途中停車駅から徒歩圏内の住宅地で地価の上昇が期待される程度の効果に留まっている。
今回の調査結果において、名古屋圏での上昇ピッチの強まりはリニアブームに牽引されたものと考えられるが、東京圏と大阪圏ではオリンピック前、あるいは再来年の消費再増税前の潜在的な駆込み需要が顕在化しつつあるとの見方もできる。なお、住宅地については人口の減少に伴って今後も全国的に二極化が進むものと考えられるが、三大都市圏以外の地方圏における上昇ピッチはやや鈍化した(前回の59.3に対して今回は58.1)。
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