商業地:東京圏と大阪圏の上昇ピッチはさほど変わらず、名古屋圏では上昇ピッチが弱まる。
商業地指数の「現在」は、東京圏が70.7、大阪圏が76.5、名古屋圏が69.4となった。前回との比較では、東京圏が72.4からやや下落、大阪圏は75.0からやや上昇したのに対し、名古屋圏は前回の水準(80.5)を大きく下回った。また、「先行き」は東京圏が56.0、大阪圏が58.3、名古屋圏が55.5と、いずれも現在より慎重な見方が強まっている。
東京圏では、オフィスビルがやや頭打ちの印象であるのに対し、ホテルや店舗ビルに対する引き合いは根強い。訪日外国人観光客数は依然として増加傾向にあり、特にその中心である中国人観光客によるいわゆる「爆買い」が不動産市場にも多大な影響を及ぼしている。今後の中国経済の動向にもよるが、中国人観光客は現在の300万人から2030年には1,000万人まで増加するとの見方もあり、その経済効果は長期にわたる可能性もある。
大阪圏でも、関西国際空港経由で入国する外国人観光客は多い。心斎橋やなんばでは相変わらず店舗の出店意欲が旺盛であり、賃料の上昇圧力が強まっている。また、大阪の中心部や京都ではホテル不足の状態が続いており、ホテルや用地に対する引き合いの強さは東京圏における銀座や新宿に匹敵する域に達している模様である。
名古屋圏は、大型商業施設や観光施設が少ないこともあり、インバウンド効果に過度な期待を抱きにくい面があることは否めない。今回の調査結果は、リニア効果で地価が急上昇したことに対する反動が出たものと考えられる。
この数年間、オフィス市場では賃料の上昇を伴わない価格の上昇が続き、取引利回りはリーマンショック前の過去最低水準を更新した。しかし、低金利(レバレッジ)に依存した現在の不動産市場はバブル化の要素をはらんでいるのも事実である。最近はマイナス金利導入の影響もあり、これまでの好況を不安視する声も聞かれるようになった。アセットタイプによっては今後もキャピタル・ゲインが期待できるものもあるが、2016年は不動産市場における息の長い踊り場が終り、潮目が変わる年になるかもしれない。
住宅地:三大都市圏では上昇ピッチが鈍化するも、地方圏では上昇ピッチが強まる。
住宅地指数の「現在」は東京圏が65.1、大阪圏が64.5、名古屋圏が72.2と、三大都市圏がいずれも前回の水準(東京圏68.7、大阪圏66.7、名古屋圏75.0)をやや下回ったのに対し、地方圏では62.5と前回の水準(58.1)をやや上回った。ただし、「先行き」に関しては商業地と同様に現在より慎重な見方が多い。
戸建住宅地に関しては、引き続き二極化が進行しているが、今回の調査では全国的に地域内における線引きが明確化している印象を受けた。地方圏で指数が上昇しているのは、いわゆるコンパクトシティ化が進み、局所的に優良住宅地が増加しているからであろう。反面、二極化の影響で選別化の対象となった住宅地では相当な長期間にわたって未利用状態が続くことになる可能性が高い。したがって、このような地域では空き家の問題とともに、今後はインフラの整備状況等についても見直しが必要になってくるだろう。
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