商業地:トランプ関税等による先行き不透明感を反映して三大都市圏のすべてで地価の上昇幅は縮小
商業地指数の「現在」は、東京圏が83.4、大阪圏は78.8、名古屋圏は66.0 となりました。前回との比較では、東京圏が86.1 から下落、大阪圏と名古屋圏もそれぞれ81.3 と75.0 から下落しています。株式市場は引き続き堅調ですが、トランプ関税等による景気の先行き不透明感が不動産市場に影を落とし始めています。
東京のオフィス市場では、大規模ビルのテナント成約率は竣工時点で70%程度と言われます。しかし、来年は2023 年以来の大量供給が予定されており、供給が集中する港区を中心に成約率は再び悪化することが予想されています。また、建築費はこの10 年で4 割上がったと言われますが、建築費の動向が読みにくいこともあって、最近は事業期間が長期に及ぶ大規模開発よりも比較的小規模な開発事業が増加傾向にあります。
今年は欧州等で熱波による被害が深刻なものとなりましたが、SDGsやESG投資の観点からすれば、既存ビルの解体時や廃材処分時に大量のCO2が発生する大規模開発よりも、既存ストックの有効活用を図る再生型の街づくりのほうが環境に優しく、社会的にも望ましいことになります。オフィス床の供給がほぼ完了する再来年以降は、国や自治体が策定する都市計画の基本方針が大きく見直される可能性も指摘されています。
地方では、AI半導体のラピダスやTSMCが進出した北海道千歳市や熊本県菊陽町がバブル状態となっている一方で、バブル状態が続いたスキーリゾートのニセコでは中国資本によるホテル開発が中断しています。
住宅地:外国人を中心とする富裕層の需要が地価を牽引する東京圏では引き続き地価の上昇幅が拡大
住宅地指数の「現在」は、東京圏が82.0、大阪圏は73.1、名古屋圏は68.3 となりました。前回との比較では、東京圏は78.8 から上昇しましたが、大阪圏と名古屋圏はそれぞれ76.8 と74.9 から下落しています。大阪圏と名古屋圏は商業地と同様ですが、東京圏では外国人を中心とする富裕層の住宅需要が地価を牽引しています。
最近の住宅市場は、中国経済の影響を多分に受けています。中国ではゼロコロナ政策で上海等の主要都市をロックダウンした後遺症が大きく、アフター・コロナでは不動産バブルの崩壊や若者を中心に失業率の上昇を招いてしまいました。この結果、自国への失望や子供の教育の観点から日本への移住を決意する富裕層が増え続け、これを社会現象として捉えた「潤日(ルンリー)」という言葉も聞かれるようになりました。
東京での新築マンション価格の高騰はこの潤日による部分が大きいのですが、最近は値上げの波が中古市場を越えて賃貸市場にも及んでいます。賃貸マンションを購入した中国人のオーナーが民泊への転用を目論んで法外な家賃を要求したり、日本人がオーナーのマンションでも元本価格が上昇した影響で契約更新時の賃料は増額改定されるケースが多く、日本人にとっては住みにくい街が増えています。
現在抜粋版を表示しております。さんゆう資料室会員の方はログインして頂くと完全版をご覧頂けます。 |
また、会員で無い方もさんゆう資料室会員(無料)のご登録を頂ければご利用頂けます。 |