今回は搾乳ロボットの評価をする機会がありましたので、ご紹介します。
搾乳ロボットには主に、①ロータリー型、②パーラー型、③ボックス型の3種類があります。ロータリー型はドーナツ状のターンテーブル上に数十頭もの牛が乗り、1~2回転する間に搾乳を行います。パーラー型、ボックス型は、それぞれ決められたスペースに牛を誘導して搾乳を行います。①~③の3種類とも、搾乳ロボットは牛が所定の位置に来ると、センサーカメラを利用して牛の乳房の洗浄や、搾乳機の取付け、各個体の乳質検査、適量の搾乳を自動で行い、その結果を一覧データとしてシステムに保管します。
搾乳ロボットを導入する最大のメリットは作業人員の削減と、作業員の負担軽減です。基本的な搾乳動作はロボットが自動で行うため、1頭あたりにかかる作業時間を短縮できるだけでなく、牛との予期せぬ接触事故や負担の大きい姿勢での作業を減らすことができます。また、各個体の健康状況を把握することも容易になるため、飼料の改善や牛群管理も容易になり、乳量や乳成分の改善にも活用できます。
上記のように飼養頭数が多い場合には「スケール」メリットがある一方で、導入コストやメンテナンスコスト、修繕コストといった、コスト面での負担が大きいのも搾乳ロボットの特徴です。海外メーカーが主流であることから、不具合が発生すると国内の技術担当者では対応できない場合や、部品を海外から取り寄せる必要がある場合もあります。
また、評価を行うにあたっては第三者への処分性も検討する必要がありますが、搾乳ロボットは各牧場の管理頭数や飼育方法、敷地面積に応じて最適な仕様を選択するため、需要者は著しく限定されます。加えて解体・移設にも相応の費用がかかることから、スクラップ価値相当とみなすケースも少なくありません。
搾乳ロボットは、酪農業の省力化や生産性向上に寄与する一方で、高額な導入・維持コストや処分性の課題を抱えています。高性能で新品に近い機種の場合、限定的ながら売却・譲渡も想定できます。そのため動産評価においては単なる機械設備の物理的・機能的な劣化だけでなく、経営への影響や市場での流動性までを総合的に考慮する必要があります。今後の技術革新や市場の変化によっては、評価の在り方が変わる可能性もあるため、引き続き動向を注視していきたいと思います。

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