商業地:大阪圏は万博効果で地価が大きく上昇、名古屋圏はリニア効果が薄れて地価はやや下落
商業地指数の「現在」は、東京圏が84.6、大阪圏は85.5、名古屋圏は80.0 となりました。前回との比較では、東京圏は82.4 からやや上昇、大阪圏は79.5 から大きく上昇、名古屋圏は81.8 からやや下落しています。また、「先行き」に関しては金利の動向が不安定なこともあり、いずれの圏域でも慎重な見方が多くなっています。
東京のオフィス市場では、依然として大規模ビルの建設が続いています。今年と来年はそれほどでもありませんが、再来年には再び昨年並みの大量供給が予定されています。賃料はようやく下げ止まってきた感もありますが、最近は賃料以前に空室率が問題視されることが多く、不動産ファンド等が所有するビルは額面賃料を下げる代わりに年々フリーレントを長期化させています。海外に目を向けても、オフィス市場はかつて経験したことのない不況に見舞われています。米国では、コロナ禍の後遺症で従業員の出社意欲が低下し、空室率はマンハッタンで約15%、サンフランシスコでは約35%まで上昇しています。この影響で、米国のオフィス融資に積極的だった邦銀が大きな損失を被る等、日本の金融市場にも余波が及んでいます。
昨年は、海外の不動産市場が金利高で冷え込む中、低金利と円安が続いた日本の不動産市場は一人勝ち状態となり、とうとう「バブル超え」の声まで聞かれるようになりました。しかし、今年は日銀の金融政策が転換期を迎えており、3 月のマイナス金利解除に続いて8 月には追加利上げも実施されています。金利の動向が不安定なせいか、不動産市場では「買い手はいるが数が減っている」という話を聞くようになりました。異次元緩和から10 年以上、国内不動産市場は外資に支えられてきたわけですが、米国の大統領選やその後の景気動向によっては外資の撤退が加速し、不動産市場でも大きな値崩れが生じる可能性があります。
住宅地:圏域別の地価動向は商業地と一致しているが、大阪圏の上昇にはマンション特需も寄与
住宅地指数の「現在」は、東京圏が81.4、大阪圏は79.8、名古屋圏は72.5 となりました。前回との比較では、東京圏が79.7 からやや上昇、大阪圏は74.3 から大きく上昇、名古屋圏は75.0 からやや下落しています。また、「先行き」に関しては、住宅ローン金利の上昇を受けて商業地と同様に慎重な見方が多くなっています。
この数年の建築費の高騰は、住宅市場にも大きな変化をもたらしています。新築物件は、以前よりも総額が嵩むため、住宅ローンを組んでも手が届かないケースが増えています。この結果、都市の中心部で住宅を購入できるのは富裕層だけとなり、それ以外の方は外延部という構図が全国的に定着しつつあります。また、都心の一等地では割高な建築費に見合った高額マンションの建設が続きますが、こうした物件の購入者の多くは中国・香港・台湾等の海外富裕層であり、日本人は郊外へ追いやられている感もあります。
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