担保適格性とは何でしょうか。まず、「担保」とは、「貸出債権を確実に回収できるようにするための債権保全手段」ですので、処分できることが大原則です。
処分できるにしても、著しい減価が生じないこと、そもそも市場性があること、そして、勝手に誰かが家を建てたりすることがないよう、現在の状態が確実であることが必要です。これらは、担保適格性の3つの原則として「安全性」「市場性(流動性)」「確実性」といわれています。
安全性の原則
安全性には、「物的安全性」と「私的権利の安全性」があります。
「物的安全性」とは、土地や建物が現実に存在し、かつ、合法的な状態にある、ということです。現実に存在しなければ問題外(水没、滅失など)です。東日本大震災では、地震による地盤沈下で土地が水没してしまうケースがありました。また、建物が倒壊していても登記は残っているというケースもあります。このような場合、実際に現地で確認すればトラブルを未然に防ぐことができます。また、現実に存在しているものの、公法上の規制に反するものや、権利移転に許可が必要な不動産は、担保不適格といえるでしょう。例えば、建築基準法違反建築物は、そもそも法律に違反しているので問題外です。一方、不動産には、所有権や賃借権などの多数の私法上の権利が成立し、これらの権利の内容により担保権そのものが否定されたり、換価処分が困難になったりします。担保不動産には、これら私法上の権利にも安全性が求められ、これを「私的権利の安全性」といいます。例えば、差押登記がある物件は、現所有者がなんらかの債務(税金など)を全額弁済しなければ強制的に売却され、自分の債権を回収できなくなります。
出典:担保適格性と不適格性|九段研社長 神山オフィシャルブログ
1965年生まれ。栃木県足利市出身。株式会社三友システムアプレイザル 取締役、株式会社九段経済研究所(当社子会社) 代表取締役。不動産鑑定士、MRICS。主な著書に「金融マンのための担保不動産の見方・調べ方」などがある。趣味は落語、競馬、ゴルフ、トライアスロン。