担保不動産は、できるだけ換価処分が容易なものが望ましいとされており、3つの原則の中で市場性が最も重要なものと考えられます。安全性や確実性についても、広い意味で市場性に包括されるものでしょう。したがって、市場性がなく処分が困難と考えられる物件は、担保不適格といえます。例えば、無道路地や崖地、墓地、管理費・修繕積立金の滞納が多額のリゾートマンション、地方の老朽化したアパートなど。現在では、高齢化に伴う空き家の増加から、引き取り手のいない不動産が増加しており、売却は非常に困難なようです。
また、建築資材に凝った豪奢な建物のように建築コストが極端に高い建物がまれに存在します。これらは担保不適格とは言い切れませんが、換価処分時には建築コストに見合った価格で売れることはまずありませんので、このような物件を担保に取る場合、担保評価は保守的に考える必要があります。
また、担保不動産の価値は不動産市場の動向に大きく左右されます。マーケットがよければ予想より高く売れ、マーケットが悪ければ予想より安くなってしまいます。特に不良債権化した担保不動産は往々にしてなかなか売れないことが多く、時間の経過とともに物件の価値が毀損していきます。特に、旅館・ホテルなどの事業用不動産の場合は毀損が大きくなることが多く、このような物件の市場性については十分な検討が必要です。
出典:担保適格性と不適格性|九段研社長 神山オフィシャルブログ
1965年生まれ。栃木県足利市出身。株式会社三友システムアプレイザル 取締役、株式会社九段経済研究所(当社子会社) 代表取締役。不動産鑑定士、MRICS。主な著書に「金融マンのための担保不動産の見方・調べ方」などがある。趣味は落語、競馬、ゴルフ、トライアスロン。