担保の適格性 ー 管理の容易性

 前述した3つの原則以外に、「管理の容易性」という原則も必要です。一般的に金融機関では、その営業区域内に担保不動産があることが原則です。担保不動産が営業区域外や遠隔地にあると、知らないうちに担保建物が取り壊されるなどというような担保価値を毀損させる行為が行われたとしても、目が届かないためにそのまま放置される危険性があるからです。

 また、反社会勢力が関連する物件、公序良俗に反する用途の物件などは、コンプライアンス要件に違反するといえるでしょう。コンプライアンス要件は債務者属性の問題ではありますが、これに反する物件は担保不適格といえるでしょう。遠隔地にあり目が届かないため、反社会勢力に占有されてしまった、なんてことにならないよう注意したいものです。

 現実的には、担保適格性にやや難のある物件でも担保に取らざるを得ないというケースもあるでしょう。むしろ、ややリスクのある物件にも積極的に融資していくという姿勢も、時代によっては考えられるでしょう。

 東日本大震災以降は、未利用地に太陽光パネルが設置されるようになるなど、その時の社会情勢や人々の価値観によって不動産の利用のされ方も変化しています。従来は担保不適格と考えられていたものでも、時代の変化により適格性を有する場合もあります。

 底地は、旧借地法4条、借地借家法5条、6条により、更新拒絶が難しいこと、利回りが低いこと等から、その取引は極めて低調で、処分の困難性等から市場性に劣るため、担保不適格と考えられていました。しかし、例えば事業用定期借地権が設定されていると、その期間には定めがあり、また一般的に地代は比較的高額になる(利回りが高くなる)ので、地主にとっては有利な土地の運用方法といえます。したがって、契約期間中は安定的に地代収入が得られるということになり、このような場合は担保適格性を有するといえるでしょう。J-REITにおいても底地をポートフォリオに組み入れている銘柄がみられます。

 郊外型ショッピングモールの影響で衰退する駅前商店街にある不動産も、商業収益性という観点からは市場性に劣り、担保適格性という観点からは厳しい見方をせざるを得ない場合もあると思います。

 しかし、一方で、駅前という立地に着目すると、土地価格がデベロッパーの投資採算に合う水準まで下落してくれば、マンションを建設しても十分ビジネスになるわけで、駅近のマンション用地として注目度は上がります。そのようなケースであれば、むしろ積極的に融資するのではないかと思われます。

出典:担保適格性と不適格性|九段研社長 神山オフィシャルブログ