太陽光発電所 -不動産と発電設備-

はじめに

2012年より電力の固定価格買い取り制度(FIT制度)が開始され、我が国の再生可能エネルギーの発電量は大きく伸長しています。この再生可能エネルギーの中でも「太陽光発電」の発電実績(2023年度)は約58%を占め、安定的な収益を確保できることから投資先としての需要も認められています。


一方で、太陽光発電所は、景観面や土砂災害など地域環境に影響を与えることがあるため、社会的な問題として提起されることもあります。国の制度においてもFITからFIPへの転換期を迎えており、さらに、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)、脱FITとしてのPPA(Power Purchase Agreement)など、太陽光発電事業の多様化が進んでいます。近年では、出力制御対策など電力の安定供給や太陽光発電のピークカット削減に期待が寄せられる「系統用蓄電池」の導入推進に向け、法改正や補助金制度の整備が進められています。

こうした太陽光発電所を取り巻く現状を踏まえ、三友グループでは、投資対象としての経済的価値の算定だけでなく、太陽光サイトの立地・法令等の遵法性、発電設備の適合性を検証するサービスを提供しており、お客様の発電事業への投資または出資に対する判断材料として、ご活用いただいております。

Valuation(価値判定)

Valuationでは、対象資産の構成内容に応じて「不動産鑑定評価書」や「動産評価書」を作成します。


三友グループの評価実績は、メガソーラーから低圧物件まで幅広い範囲で年間100件程度のご依頼をいただいており、複数サイトの「事業価値評価」も手掛けています。

太陽光発電所のキャッシュフロー算定にあたり、FIT認定されたサイトでは、固定買取期間中は売電単価が固定されますので、太陽光の発電量が把握できれば売電収入が容易に算定できます。一方、FIP認定されたサイトでは、売電単価として基本単価にプレミアムが加算されるものの、基本単価は変動する電力の売買市場に依存するため、如何に市場単価の高い時間帯に売電できるかが重要なポイントとなります。そのため、FIP認定されたサイトでは、アグリゲーターが太陽光発電事業で大きな役割を担うことになります。

※:アグリゲーターは、英語で「集約する」という意味を持つ「アグリゲート(aggregate)」からきた言葉です。その名の通り、私たち電力を使用する多くの需要家が持つエネルギーリソースをたばね、需要家と電力会社の間に立って、電力の需要と供給のバランスコントロールや、各需要家のエネルギーリソースの最大限の活用に取り組む事業者のことです。「特定卸供給事業者」とも呼ばれます。
出典元:経済産業省資源エネルギー庁HPより抜粋

営農型太陽光発電であるソーラーシェアリングでは、R6年4月施行の改正農地法により許可に対する根拠が明確となり営農報告義務も強化されましたが、一時転用許可期間や営農継続性、資金調達などにハードルが残されています。
三友グループでは、①太陽光発電事業と②営農計画に基づく営農事業の両面の価値算定を行っておりますので、今後のソーラーシェアリングに対するお客様の多様なニーズにお応えすることが可能です。


出典元:農林水産省「営農型太陽光発電について」2024年6月より抜粋

ここで、最近では三友グループでも「系統用蓄電池」のValuationを実施していますが、「系統用蓄電池」に関連する動きとして、再エネ特措法関連法令が令和6年4月に改正されて再エネ併設蓄電池の系統充電が可能となり、再エネ電源で充電した電気量もFIPプレミアム交付の対象となりました。そのため、2030年の系統用蓄電池の導入見通しは14.1~23.8GWhと拡大が見込まれるとともに、アグリゲーターの運営手腕が系統用蓄電池の事業性を大きく左右するものと想定されます。


出典元:経済産業省資源エネルギー庁「系統用蓄電池の現状と課題」2024年5月より抜粋

Due Diligence(詳細調査)

Due Diligenceでは、太陽光発電事業における不動産としての遵法性リスクを判定する「不動産DD」、発電量シミュレーションや施工状態など設備としての適合性リスクを判定する「技術DD」を作成しています。


固定買取制度が導入された当時は法令上の整備が進んでおらず、社会的な諸問題が生じる要因ともなりましたが、近年は各自治体で条例やガイドラインの整備が進められ、前述の通り、令和6年4月改正の再エネ特措法関連法令でFIT/FIP認定申請要件も強化がなされています。

出典元:再⽣可能エネルギー発電設備の適正な導⼊及び管理のあり⽅に関する検討会2022年4月「太陽光発電の地域トラブルと調和・規制条例、今後の適正な促進に向けて」より抜粋

不動産DDでは、こうした太陽光発電事業に関連する様々な現行法令や条例に対して、対象サイトが法令遵守されているかどうか確認し、対象地の範囲や権利関係の整合性、災害リスクの可能性等を検証しています。そのため、不動産DDの結果は、購入または投資対象としての判断材料に広く活用されています。

技術DDは、超過確率に基づいた発電量シミュレーションの実施だけでなく、不動産DDと同様、太陽光発電設備の状態や施工状況、外部周辺環境への影響など、物的なリスクを確認します。パネルや架台等に不具合が生じていないか、隣地周辺に反射光が及んでいないか、隣地建築物や立木から生ずる日影が太陽光パネルに影響していないか、傾斜地における切土盛土の法面やサイト内の排水性など防災性能が維持されているかなどを確認します。最近ではドローンの赤外線機能や空間測量技術を活用し、効率性を高めた調査も実施しています。

三友グループの不動産DDや技術DDは、総合的な視点で太陽光発電所における物件瑕疵のスクリーニングを目的として、お客様から調査要請を賜っております。年々着実に調査実績を積み上げており、今年度も多方面のお客様よりバルク調査のご相談もいただいています。

おわりに

以上の通り、三友グループでは、経済的価値の算定と物的瑕疵のスクリーニングの2軸サービスをもって、太陽光発電所の取得や投資に対する判断材料をお客様に提供していますが、地球環境や経済環境の変動と相まって、今後も太陽光発電所は我が国の再生可能エネルギーの中心的な存在であり続けることが推察されます。

そのため、太陽光モジュールなどの機械設備の技術革新だけでなく、架台等設備の撤去費用や廃棄・リサイクルの技術的問題など太陽光発電事業が併せ持つ不確定要素の検証を適宜進め、公正で中立な立場で提供する上記サービスを通して、今後も三友グループは持続可能な社会に貢献して参ります。