ワンルームマンションNOI利回りアンケート雑考(2018年)

 当社では毎年末、提携する全国の不動産鑑定士に対してワンルームマンションのNOI利回りに関してアンケート調査を実施している。

最小値である東京山手線内は3.0%台に突入

 最小値は前回同様「東京山手線内」で、前回調査時点の4.1%から0.2%低下して3.9%となった。次いで「東京その他23区(山手線外)」が4.5%(前回は4.6%)、「東京23区外」が5.1%(同5.2%)、昨年4位の「大阪市」と5位の「横浜市・川崎市」は5.3%で並ぶ結果となった(同大阪市5.4%、横浜市・川崎市5.5%)。なお、上位にランクインした地域は以下のとおりである。

順位 地域名 NOI利回り
H29 H28(昨年順位)
東京23区(山手線内) 3.9% 4.1% (1)
東京23区(山手線外) 4.5% 4.6% (2)
東京23区外 5.1% 5.2% (3)
大阪市 5.3% 5.4% (4)
横浜市・川﨑市 5.3% 5.5% (5)
さいたま市 5.5% 5.8% (7)
名古屋市 5.6% 5.7% (6)
千葉市
京都市
神戸市
福岡市
5.7%
5.7%
5.7%
5.7%
5.9% (10)
5.9% (10)
5.8% (7)
5.9% (10)
(2017年12月時点)

想定タイプ

構造 RC造
築年 5年
エレベータ
駅距離 徒歩5分
面積 25㎡/戸

千葉市、京都市、福岡市等の順位が上昇

 今回の調査結果では、順位に大きな変動はないものの、上位の地域では依然として利回りの低下傾向が続いている。下げ幅自体は縮小傾向にあるものの、投資マネーは引き続き不動産市場に流れ込んでおり、投資意欲の旺盛さが窺える。また、1位の「東京山手線内」はNOIcapでも3.0%台に突入したように、多少高くても条件の良い物件を希望する投資家の基本姿勢に変化はみられない。

 今回の調査結果では、千葉市、京都市、福岡市等が順位を上げている。これは、地方都市でも中心部の物件は稼働率が安定しているため、東京圏での高値買いを嫌った個人投資家等が投資対象を地方に広げていることにも一因がある。このように、少なくともレジデンスに関しては、地方を代表する中核都市と東京圏との利回り格差は将来的には縮小するものと考えられる。

成熟したワンルーム市場は堅調に推移

 ワンルームマンションのマーケットは、引き続き活況を呈している。空室や修繕等の問題はあるが、条件の良い物件を購入できれば他の資産よりは高いリターンを得ることができる。また、不動産の専門家ではない個人投資家等にとっては市場の透明性が高く、総額的にも手頃感がある。今後、不動産市場全体としては生産緑地の指定が解除される「2022年問題」や、団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」等を抱えてはいるものの、成熟したワンルーム市場は少なくとも2020年までは堅調に推移するものと予測される。

鑑定統括部 神山 大典(不動産鑑定士)


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