前回コラムに続いて、弊社グループ会社の(株)事業性評価研究所と共同で行う「動産モニタリング&動産評価」のうち、今回は建造中の船舶に関する「動産評価」の紹介です。
本件動産評価の対象は、完成した船舶ではなく建造中の船舶となりますが、「動産モニタリング」で資材の仕入れ状況や建造進捗をモニタリングした結果を元に、評価を行います。
船舶建造の各工程(下記1~6)を経て、顧客へ引渡し可能な船舶となります
- 巨大な船舶をそれぞれブロック分割して設計
- 直線および曲線状に加工された鋼板を溶接して各種ブロックの組み立て
- 各ブロックを接合して船体完成
- 進水
- 艤装工程として内装や設備の施工
- 試運転・各種検査
本評価では、評価基準日(=実査日)現在の対象企業の在庫について公正市場価値(FMV)を決定します。今回は依頼者の求めに応じて任意清算価値(OLV)も参考として求めました。
自発的な買い手と自発的な売り手が、いずれも売買を強制されることなく、また双方があらゆる関連事実を十分に知ったうえで、双方に公正に取引を行う場合に、財産に対し合理的に期待され得る、特定日現在における金銭的に表示された見積額をいいます。
任意清算価値(OLV:Orderly liquidation value)
売り手が現状有姿で売却を余儀なくされる状態で、合理的な期間内に買い手が付くことを想定した実現可能な総売却価格をいいます。
建造中の船舶の価値は、工程進捗の程度に応じて相違します。起工後間もない時点であれば、調達した鋼材や原材料等としての資産が主要な価値となり、工事が進行していくにつれて建造船舶の物的価値に接近していきます。
つまり、正常営業時における公正市場価値(FMV)は、工程の各段階を踏まえながら、動産価値が継続的に積み上がっていく曲線として捉え、一方、任意清算価値(OLV)は、それぞれの段階での現況有姿での売却処分価値として捉えます。
本件動産評価では、現地実査時に工場関係者への聴聞を実施し、造船工程の進捗へ影響を及ぼすと想定される懸念事項等を確認しつつ、対象船舶における工程表や契約関連資料の突合作業を行い、その結果を評価に反映しました。
最後に、これまで定期的に動産モニタリングと動産評価を実施してきた評価対象の船舶が、工程進捗通りに進水式を終えて岸壁に寄せられ、艤装工程に入っている船影をみると、評価人にとっても感慨深いものがありました。
三友グループの「動産モニタリング+動産評価」が造船事業運営の一支援を担い、顧客ご担当者様からは感謝のお言葉をいただいている点には、評価会社冥利に尽きるとともに、今後も動産評価における誠実かつ真摯な姿勢を維持して評価業務に取り組んでいく新たな決意を持つ事ができました。
事業開発本部は、営業開発部や不動産ソリューション部、事業企画部の3部門を統括し、動産評価、不動産デューデリジェンス、建物エンジニアリングレポート及び新規分野などの商品やサービスを取り扱い、お客様の幅広いニーズをサポート。
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