先日、内航船舶の動産評価を行いました。船舶はその用途に応じて、貨物船や漁船、旅客船など様々な種類に分かれますが、今回の評価対象である「内航船舶」は国内の海運を担う重要は船舶であり、内航貨物船や内航旅客船に大別されます。
また、世界の港へ航行できる貨物船などは「外航船舶」と呼ばれますが、世界をマーケットとしている関係で、中古船市場の取引情報や各種指標が比較的容易に入手可能です。一方で、内航船舶は国内での取引が中心となるものの、取引実績事例の入手が困難であるため、内航船舶の動産評価では、資料収集や中古船の買取・販売業者へのヒアリングを実施して、適切な事例の収集に努めました。
船舶は、機械設備の塊と言っても過言ではなく、分厚い鉄の構造体であり、船装や内燃機関、機装・電装など、様々な機械や設備が凝縮された動産です。ただ、動産でありながら、不動産と同様に登記による所有権等の公示が可能である点も興味深いです。
内航船舶は船舶安全法によって航行区域が主に国内に限定された船舶です。内航船舶はその用途に応じて様々な種類があり、一般貨物船、油送船、RORO船、コンテナ船、ケミカル船、自動車専用船、LPG船、石灰石専用船などに細分され、近年は輸送物資別の専用船化が年々進んでいます。また、内航海運業は国内の港と港を結び、国内物流の約4割(産業基礎物資輸送の約8割)を占め、国内物流の重要な役割を担っています。
ここで、動産評価の一工程である対象物件の確認作業では、国交省運輸局に備え付けの船舶原簿や船舶国籍証書から対象船舶の信号符字や船名、船籍港、進水年月、所有権などを確認し、対象船舶の特定を実施しました。また、最近はスマホのアプリで世界中の船舶の航行位置を地図上で確認することができるため、公開されている航行位置記録から評価対象船舶が日本中の港に寄港している様子を把握することができました。
内航船舶の動産評価では、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの3手法の適用を検討しますが、取引精通者の意見を集めながら三手法をそれぞれ適用して、納得のいく評価モデルが完成しました。時々の市場動向で左右されますが、評価の難しい船にも適用できそうです。
また、一般的には、船齢が20年前後になると定期的な修繕費用が嵩むようになるため、船主は海外への売船を判断します。近年は新造費用の高騰により売り控えるケースが多くなり、船齢30年の現役船舶を多く存在しているようです。
このように、今回、内航船舶の評価を行うことで内航船舶業界の内情を把握できましたが、こうした内情は、動産評価を実施しなければ把握できなかったことでもあるので、今回の動産評価は私自身の大きな経験となりました。
事業開発本部は、営業開発部や不動産ソリューション部、事業企画部の3部門を統括し、動産評価、不動産デューデリジェンス、建物エンジニアリングレポート及び新規分野などの商品やサービスを取り扱い、お客様の幅広いニーズをサポート。
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