動産評価の精通者への道のりはまだまだ先は長いですが、動産評価人が使用する共通言語であり、実際に動産評価書でも記載している用語について、今回は紹介します。
※出典元は、ASA認定資産評価士(機械設備)の資格講座テキスト(ME201~ME204、日本語版JaSIA訳)およびASA刊「Valuing Machinery and Equipment (The Fundamentals of Appraising Machinery and Technical Assets 4th edition)」です。
動産の主な種類
機械(Machinery)
製品を生み出す、または材料や部分製品の状態を何らかの形で変えるために設計された通常電動の機械装置を網羅する用語である。
設備(Equipment)
操作や活動に使用されるあらゆる機械及び他の全ての装置や器具が含まれる。よって、全ての機械は設備であるが、全ての設備が機械であるわけではない。
什器(Furniture)
事業の補助的機能において用いられる特定タイプの設備である。スタッフや必要となる保管施設のために、便利で効率的な作業場を提供するように設計されている。
定着物(Fixture)
不動産に付着または取り付けられ、不動産の一部を構成する動産である。照明や給排水設備といった建物構成部分を含むことがある。
営業用定着物(Trade fixture)
営業または事業を営む目的のために使用される定着物である。小売業では商品の陳列用に設計された什器または定着物とみなされることがある。評価士は、営業用定着物に関わる地方法及び慣習を考慮しなければならない。
価値の定義
新規再生産コスト(Reproduction Cost New)
同一または極めて類似した材料を用いて資産の新規模造品を再生産するための特定日における現在コストである。
新規再調達コスト(Replacement Cost New)
評価対象資産と最も同等に近い効用を有する同様の新規資産の特定日における現在コストである。
公正市場価値(Fair Market Value:FMV)
自発的な買い手と自発的な売り手がいずれも売買を強要されることなく、また双方があらゆる関連事実を熟知した上で取引を行う場合に、資産に対して合理的に期待され得る特定日現在における予想金額である。
公正市場価値-継続使用(FMV in Continued Use)
自発的な売り手と自発的な買い手がいずれも売買を強要されることなく、また双方が設置を含むあらゆる関連事項を熟知した上で取引を行う場合に、対象資産が生み出す収益が報告された評価価値を裏付けるものであるとの前提で、当該資産に対して合理的に期待され得る特定日現在における予想金額である。(注:この額には当該資産を十分に運転可能とするために必要な通常のあらゆる直接及び間接コストが含まれる。)
公正市場価値-収益分析を伴う継続使用(Fair Market Value in Continued Use with an Earnings Analysis)
自発的な売り手と自発的な買い手がいずれも売買を強要されることなく、また双方が設置を含むあらゆる関連事項を熟知した上で取引を行う場合に、対象資産が生み出す収益に基づいて、当該資産に対して合理的に期待され得る特定日現在における予想金額である。(注:この額には当該資産を十分に運転可能とするために必要な通常のあらゆる直接及び間接コストが含まれる。)
公正市場価値-設置(FMV Installed)
自発的な買い手と自発的な売り手がいずれも売買を強要されることなく、また双方が設置を含むあらゆる関連事実を熟知した上で取引を行う場合に、設置済みの当該資産に対し合理的に期待され得る特定日現在における予想金額である。
公正市場価値-撤去(FMV Removed)
自発的な買い手と自発的な売り手がいずれも売買を強要されることなく、双方があらゆる関連事実を熟知した上で取引を行う場合に、対象資産が撤去され別の場所に移動されるとの前提で、当該資産に対して合理的に期待され得る特定日現在における予想金額である。
清算価値-現状設置下(Liquidation Value in Place)
破綻した施設の全体が売却完了の制限期限内に売却されるとの前提で、当該施設より一般的に実現され得る特定日現在における予想金額である。
任意清算価値(Orderly Liquidation Value:OLV)
売り手が現状有姿での売却を余儀なくされる場合に、買い手を見つける合理的な期間があるという前提で、清算売却により一般的に実現され得る特定日現在における予想金額である。
強制清算価値(Forced Liquidation Value)
売り手が緊急に現状有姿での売却を余儀なくされる場合に、適切に公示され実施された競売によって一般的に実現され得る特定日現在における予想金額である。
残存価値(Salvage Value)
別の場所で使用するために撤去した資産全体またはその構成要素に対して期待され得る特定日現在における予想金額である。
スクラップ価値(Scrap Value)
生産用途ではなく、そこに含まれる材料を売り物として売却する場合に、当該資産について実現され得る特定日現在における予想金額である。
公正賃貸価値(Fair Rental Value)
独立当事者間取引において、貸与する意思とそれに関連した情報を持った資産の所有者が、賃借をする意思と関連した情報を持った賃借人に資産を一定期間賃貸するために受け入れるであろう価値である。
評価手法の定義
コストアプローチ/原価法(Cost Approach)
一般的に認められた3つの評価手法の1つで、新規再生産コストまたは新規再調達コストから、あらゆる形の減価分を控除して価値の見積り額を決定する。(この手法では、賢明な買い手にとって資産の最大価値とは、同等の効用を有する新規資産を建造するのに現在必要な金額から、使用年数や状態の違い及びその他の減価要因を控除した額であると考える。)
マーケットアプローチ(取引事例比較法)(Sales Comparison Approach)
一般的に認められた3つの評価手法の1つで、類似資産または類似の効用を持つ品目の最近の売却価格及び売り申込価格を対象品目と比較する手法である。必要であれば、対象資産の特性を反映させるよう比較可能資産に調整を加える。比較可能資産が対象資産より優れている場合は下方修正を、劣っている場合は上方修正を行う。こうして得られた調整済み売却価格が、当該対象資産の価値の目安となる。
インカムアプローチ(収益還元法)(Income Approach)
一般的に認められている3つの評価手法の1つで、一定の収益水準での資本還元によって測定した所有から生じる将来利益の現在価値を検討する。この手法では、直接還元法、または割引キャッシュフロー(DCF)分析が用いられる。
用語の定義 ※アルファベット順
発生減価(Accrued Depreciation)
物理的劣化、機能的退化及び経済的退化を含むあらゆる原因による価値の喪失。
減価償却累計(Accumulated Depreciation)
特定日時点において、資産の取得原価から控除された減価償却合計額。
使用年数/耐用年数分析(Age/Life Analysis)
資産の経過使用年数や残存耐用年数の算出に用いる計算プロセス。
取得価格配分(Purchase Price Allocation)
取得時に支払われた対価の総額(取得価格)を各取得資産に割り当てることをいう。
評価基準日(Appraisal Date)
評価価値が適用される特定日。
資産(Asset)
有形及び無形を含むあらゆる種類の資産
平均耐用年数(Average Life)
資産の通常の予想耐用年数
平均残存耐用年数(Average Remaining Life)
調査対象の資産の平均残存耐用年数で、通常年数で表示される。
簿価(Book Value)
資産計上された原価から減価償却を控除したもので財務報告に用いられる。
資本還元(資産計上)する(Capitalize)
選択された収益を還元利回り(Capitalization Rate)と呼ばれる数字で除することにより、収益フローの価値を表す値に換算する評価手法。または、会社の帳簿に資産を計上すること(会計用語)。
経過年数(Chronological Age)
資産品目が最初に製造された時から経過した年数。
付保割合条件付保険(Coinsurance)
被保険者が、保険料の減額と引き換えに保険対象となる資産価値に対して(予め合意された)特定割合の付保をし、その実際の割合に応じて損失を分担することに合意する保険契約。
公的収用(Condemnation)
公共団体が、自らの土地収用権限を合法に行使することにより、私的資産を公共の目的のために取得する実際のプロセス。
修復可能な減価(Curable Depreciation)
経済的に修復が可能なあらゆる形の減価(その結果得られる効用および価値の増大が、修復費用と同等以上であるもの)。
(会計)減価償却(Depreciation)
資産の取得原価を、特定期間にわたって一定額ずつ分割して回収するための数理的手順。
(評価)減価(Depreciation)
物理的劣化、機能的退化及び経済的退化が原因であるものを含むあらゆる原因による資産の価値の実際の損失。
価値減少(Diminution in Value)
破損した航空機の評価に使用。一種の経済的退化で、航空機の現状ではなく、過去に破損履歴がある航空機とそうでない航空機の取引価値の差額で算出される。違いの起因は、飛行機の耐空性ではなく市場での認識による。
直接コスト(Direct Cost)
資産を購入し、機能的使用に供する際に直接発生する全てのコスト。
経済的退化(Economic Obsolescence)
外的退化と呼ばれることもある。資産の外的要因によって引き起こされる資産の価値または効用の喪失。
経済的耐用年数(Economic Life)
新規の資産が、その意図された用途のために有益に使用可能な予想年数。
実効年数(Effective Age)
同種の新規資産と比較した資産の実質的な明らかな使用年数(つまり、資産の実際の状態により示唆される使用年数)。
収用権(Eminent Domain)
公共目的のために私的財産を取得する公共団体の権限。このプロセスには通常、財産所有者に対する何らかの正当な補償の支払いが含まれる。
予想残存耐用年数(Estimated Remaining Life)
ある品目または品目群が引き続き使用されると予想される期間で、残存耐用年数ともいう。
過剰能力(Excess Capacity)
必要な生産能力を超えて購入された機械設備で、ピーク期や他の機械が修理のために停止している時の予備として追加の運転能力の利用を可能にする。需要の変化等により不要となった運転能力のことである場合もある。
除外(Exclusion)
担保範囲から除外される資産または資産種別について説明する保険契約の条項(保険)。
固定資産(Fixed Asset)
資本的資産と同義の恒久的資産のことで、通常サービスの提供または製品の生産に用いられる土地、建物および機械設備で構成される。
定着物(Fixture)
不動産に恒久的に付着され、その不動産の一部となっている動産。
機能的退化(Functional Obsolescence)
価値の喪失が、資産に固有要因によって生じる減価。原因としては、不適切・過剰な生産能力、過剰建設、機能的効用の欠如、過剰稼働コスト等が生じるような設計、材料またはプロセスの変更が考えられる。
のれん(Goodwill)
顧客の認知度や愛顧の結果として、事業体が獲得する優位性や便益。
粗利益(Gross Profit)
総売上高から売上原価を差し引いたもの。
最有効利用(Highest and Best Use)
物理的に可能かつ合法的で、財務的にも実行可能であり、収益を最大化する資産の使用方法。
当初コスト(Historical Cost)
資産が初めて使用に供された時の当初資産計上原価。
修復不能な減価(Incurable Depreciation)
劣化や退化の形態をとる減価で、効用及び価値の増加が支出を下回るため、経済的に修復が実現不可能なもの。
修復不能な機能的減価(Incurable Functional Depreciation)
構造材料または設計の不足または過剰によって生じる減価または欠陥の要素で、実際的または経済的に是正が不可能なもの。
指数法(Indexing)
現在原価の見積りに用いる方法で、長期にわたるコストの動きを反映した指数ファクターを品目の取得原価にかけ合わせる。
間接コスト(Indirect Cost)
資産を購入し、使用に供する際に間接的に発生するコストで、通常の管理費、専門家の報酬、建設中の金融費用、保険、警備、教育、訓練、エンジニアリング等の経費が含まれるが、異常コストは一切除外する。
無形資産(Intangible Asset)
物理的存在はないものの、企業に発生する権利または特権に基づいた価値を有する資産。
機械設備(Machinery and Equipment)
生産のために使用できる物的施設で、それに付随する設置・サービス設備を含み、製造・工業目的のために設計された、または設置方法にかかわらず必要なその他全ての設備、事業の管理や適切な運営のために必要な什器を含む。
通常耐用年数(Normal Useful Life:NUL)
新規資産が使用されなくなるまでに実際に使用されるであろう予想年数。
取得原価(Original Cost)
現所有者の管理下にある資産の当初資産計上原価。
動産(Personal Property)
不動産に恒久的に取り付けられておらず、また不動産の一部ではない暫定的または移動可能な性質の資産または財産。有形ではあるが不動産ではない全ての資産(各司法権の解釈に左右される)。
物理的劣化(Physical Deterioration)
耐用年数の使い切りまたは満了による資産の価値または効用の喪失で、摩耗や劣化、様々な要素への露出、物理的ストレス、その他の同様の要因によって引き起こされる。
物理的耐用年数(Physical Life)
新規資産が、機能的退化または経済的退化による早期除却の可能性は考慮せずに、純粋に物理的な要因によって劣化したり使用不可能な状態になったりするまでに物理的に耐えうる年数。
価値の前提条件(Premise of Value)
決定しようとする価値の定義を特定する記述。
価格(Price)
特定の取引を取り巻く環境の下、特定の買い手が支払いに合意し、特定の売り手が受け入れに合意した金額で必ずしも価値に等しいとは限らない。
代替性の原則(Principle of Substitution)
賢明な買い手は、ある資産に対し同等に望ましい代替品を市場で入手するコスト以上の金額を支払うことはないという理論。
資産(Property)
有形及び無形の資産からの将来収益を所有する合法的な権利。現金を含むあらゆる資産で、通常所有権が当事者間で譲渡可能なもの。
評価の目的(Purpose of the Appraisal)
評価の意図する使用用途に合致した、見積るべき価値を明確に特定する記述。
経済的残存耐用年数(Remaining Economic Life)
一定の使用年数を経た資産が、意図する目的のために引き続き有益に使用できると予想される期間。
残存耐用年数(Remaining Useful Life)
一定の使用年数を経た資産が、使用されなくなるまで引き続き実際に使用されると予想される期間。
(評価)残存価値(Residual Value)
有形資産について、通常耐用年数の満了後の資産の価値を表す。
(会計)残存価値(Residual Value)
処分予定日における有形資産の推定される正味スクラップ価額または(中古)下取り価額で処分価値とも呼ばれる。
(リース)残存価値(Residual Value)
リース期間終了時のリース機器の価値。税務目的において「真正リース」と認められるためには、リース機器のリース期間終了時の見積残存価格が、インフレを考慮せずに当初原価の少なくとも20%に相当しなければならない。ただし、財務会計目的においては、貸し手は残存価値を計上する必要はない。
有形資産(Tangible Asset)
土地、建物および機械設備といった物理的資産。
営業用定着物(Trade Fixture)
小売業の陳列ケースのような営業または事業を営む目的のために使用される特殊な定着物。その定義は地域の法律や慣習によって異なる場合がある。
耐用年数(Useful Life)
資産が設計された機能を果たすことが合理的に期待できる期間。
価値(Value)
ある品目の額、相対的な価値、効用または重要性で、価格または原価と等しい場合もあれば、そうでない場合もある。
事業開発本部は、営業開発部や不動産ソリューション部、事業企画部の3部門を統括し、動産評価、不動産デューデリジェンス、建物エンジニアリングレポート及び新規分野などの商品やサービスを取り扱い、お客様の幅広いニーズをサポート。
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