私たちは家に住み、会社で仕事をしたりしていますが、その家や会社がすべて不動産です。外国では船の上で生活している人もいますが、日本ではお目にかかりませんね。家は一軒家だったり、マンションだったりします。会社は多くがビルの中にありますね。また、家族でごはんを食べに行くお店も不動産です。
それらのマンションやビルは空中に浮いているわけではなく、土地の上にありますよね。その家やマンションなどの建物は土地にくっついていて、簡単には動かすことができません。そして、土地も動かすことができません。それなので、「不・動・産(うごかすことができないもの)」と表現するのです。
日本では、民法86条に「土地およびその定着物は、不動産とする」という規定があります。したがって、一般的には、不動産とは「土地と建物」と考えてよいでしょう。
民法 第86条(不動産及び動産)
1 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
こういう区別をなぜしているかというと、例えば売買等の取引があったときに、その取引対象が不動産か動産かで法律上の取り扱いが異なるからです。
不動産の売買であれば、自分が買って所有権を取得したということを売主以外の他人に主張するためには登記が必要になります。他方、動産の売買であれば、その動産の引き渡しが必要になります。
また、工場の場合、その工場(建物)と土地、工場の中にある機械や器具などはそれぞれが独立した物の集まりです。それら全体としては、民法上は一つの物ではありませんが、工場抵当法はそれを一つの不動産とみなしています(工場抵当法14条)。このような例は他にも鉄道抵当法や鉱業抵当法などがあります。
出典:不動産とは何か?|九段研社長 神山オフィシャルブログ
1965年生まれ。栃木県足利市出身。株式会社三友システムアプレイザル 取締役、株式会社九段経済研究所(当社子会社) 代表取締役。不動産鑑定士、MRICS。主な著書に「金融マンのための担保不動産の見方・調べ方」などがある。趣味は落語、競馬、ゴルフ、トライアスロン。