借地権(底地)割合についての最新分析 その2

 不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。前回は、借地権割合の前半について見てきましたが、今回は後半について見ていきたいと思います。

 今回は続きとして、借地権(底地)割合に影響を与える借地権の態様につき、その態様の違いがどのように影響を与えるかを示したいと思います。

賃借権である借地権割合

1.「堅固建物」所有目的と「非堅固建物」所有目的とで違いはあるのか?

 裁判例:東京地判令和4年2月17日LEX/DB25603754では、以下の違いが見られます。
 旧借地法の適用される借地権の場合ですが、堅固建物所有目的は非堅固建物のそれよりも借地権割合が高くなっています。

借地権割合 堅固建物所有目的75%
非堅固建物所有目的70%(路線価図の借地権割合70%)
(底地割合で見ますと、堅固建物所有目的では25%、非堅固建物所有目的では30%と裁判例では判断しています)

 裁判例はこれだけですが、裁判官は旧借地法適用の借地権の割合については、上記のように判断している可能性があります。

2.対象借地権の利用状況

 東京地決平成15年3月13日LEX/DB28092777は、対象借地権が無道路の借地権であることから、個別的な利用状況や市場性が劣るとして、借地権割合を5%落としています。

 これについては、「底地割合(借地権割合)」は、「周辺地域の社会状況や慣行に照らして決定されるものであるから、地主と借地人との個別事情により左右されるものではない」として、近隣地域の借地権割合(底地割合)を適用すべきだとする裁判例(東京地決平成15年1月20日LEL/DB2808246)もありますので、裁判官によって考え方に差異があるようです。

3.借地の経過期間

 経過期間が長いと借地権割合が低くなるとの判断がなされています(東京地判平成27年1月15日LEX/DB25524358は地域の借地権割合が路線価における借地権割合である70%に対して、借地の存続期間が短いとして65%としています)。

4.地上建物の老朽化

 地上建物が老朽化し、建物が壊れて存続しなくなると、期間更新ができなくなる可能性があるからとして、地上建物の老朽化が激しいとして一般的借地権割合90%のところ、70%と低い借地権割合が判断されています。

 また、借地上の建物が建替え時期を迎えるような場合にも、借地権割合が低くなる(底地割合が増加する)場合があります(東京地判令和3年11月24日LEL/DB25602174、東京地判平成31年2月5日判例地方自治460号77頁ほか)。

5.更新料および建物増改築承諾料の負担あり

 この場合は借地権の価値がそれだけ減りますので、借地権割合も減少します。

6.容積率緩和

 容積率が800%から900%に緩和された後にあっては、緩和後に建築された建物よりも緩和前の対象建物が延べ床面積が劣ることから、借地権割合が低く判断されています(東京地判平成25年2月8日LEX/DB25511183は、標準的借地権割合90%に対し、85%と判断)。

賃借権である借地権割合以外の価格割合

 賃借権である借地権割合以外にも底地や法定地上権などについても、傍論で、判断している裁判例があります。

1.底地割合

 底地業者が底地を取得する場合は、路線価における借地権割合70%、すなわち、底地割合30%の地域にあって、10~15%と低めの底地割合が判断されています(東京地判平成30年4月18日LEX/DB25555457)。

2.法定地上権割合

 法定地上権も、もちろん、物権たる地上権ですので、法定地上権割合は賃借権である借地権に対して、割合が加算されています(東京地判平成29年10月19日LEX/DB25539748は、近隣地域の借地権割合に5~10%加算しています。この事案は借地権が地上権である場合の借地権割合を求める参考になるものと思います)。

3.定期借地権

 定期借地権については、慣行的定期借地権割合は存在しませんが、この事案では、定期借地権の残存期間が長いことから、慣行的普通借地権割合を参考として、70%としています(東京地判平成30年8月10日LEX/DB2555684)。

4.転借地権割合

 借地権割合が60%であるのに対し、さらにそれに60%を乗じて、転借地権割合を36%としています(大阪高決平成19年8月9日判タ1255号259頁)。

5.使用貸借権

 土地の使用貸借契約(無償での土地の使用収益)における使用貸借権割合は、借地権割合の3分の1相当とするものがあります(国税不服審判所平成18年7月11日LEX/DB26012058)。

6.借地権の効力の及ばない土地の賃借権部分

 借地権の対抗力を借地人名義である建物登記によって得ている借地権の場合で、その借地権の対抗力の及ばない部分の価格割合を借地権割合(60%)のさらに70%(=42%)としています(東京高判昭和61年9月25日判例時報1211号52頁)。

7.借家権割合

 借家権割合を30%(東京地判令和4年8月3日LEX/DB25606684)とするものと、40%(東京高判昭和61年9月25日判例時報1211号52頁)とするものがあります。


  1. 共有物の利用の円滑化に関する民法改正について(令和5年改正民法その1)
  2. 相隣関係に関する民法改正について(令和5年改正民法その2)
  3. 抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲について
  4. 法定地上権と配当について
  5. 未登記建物に対する対応
  6. 場所的利益について
  7. 借地権(底地)割合についての最新分析 その1
  8. 借地権(底地)割合についての最新分析 その2 <- 本記事