新たな担保法制について その5

 不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。今回は「新たな担保法制」の5回目です。
 

Ⅰ 譲渡担保法:

1.特筆すべき項目

 今回は下記の特筆すべき項目の(6)を採り上げます。

  1. 占有改定劣後ルールの導入(譲渡担保法(以下、法という)36条
  2. 集合動産の特定を種類と所在場所だけを示すことでできるようにした(法40条)
  3. 帰属清算・処分清算において、目的物の所有権が確定的に譲渡担保権者あるいは第三者に移転するのは、原則として、通知後2週間後(法60条、61条)
  4. 後順位担保権者の譲渡担保権の実行が、それに優先する全担保権者の同意を得れば可能となった(法62条)
  5. 競売申立て、配当要求も可能になった(法72条)
  6. 所有権留保についても譲渡担保の規定が準用される(法111条)

2.各項目について

 それでは見ていきます。

(6)所有権留保についても譲渡担保の規定が準用される(法111条)

(譲渡担保契約の規定の準用等)
第111条前章(第31条第1項、第38条、第1節第3款及び第4款並びに第2節第2款及び第3款を除く。)の規定(動産譲渡担保契約に係る部分に限る。)は、留保所有権について準用する。―以下、略―
1.所有権留保の類型

 新法111条は譲渡担保に関する規定を所有権留保にも準用する旨の規程です。
 所有権留保とは、所有権留保契約から派生する担保権であり、以下の2類型が定義されています。
(1)売主における所有権留保 売買契約等において、代金完済まで売主に所有権を留保する契約に基づくものです。割賦弁済での車の売買において、通常行われるのがこの類型です。売買契約等であって、代金債務その他の金銭債務を担保するために、その債務の全額の支払いがなされるまで、動産の所有権が売主等に留保される旨の定めがある契約から発生します。
担保権者を留保売主等とし、設定者を留保買主等としています。留保買主等は、所有権を有しませんが、実際に占有しており、購入した動産を即時に使用収益できます。
(2)第三者所有権留保 動産の所有権の移転を受けるべき者が、第三者に代金等の支払を委託し、その求償債務その他の金銭債務の担保として、その第三者にその動産の所有権を取得させ、その債務の全部が弁済されるまで、その動産の所有権をその第三者に留保する旨の定めのある契約等をすることにより発生します。
 動産の購入資金を第三者が立替払いをし、その後、その買主等から立替資金を回収する形態で、クレジットカード決済などが該当します。
 留保売主等には、この第三者も含みます。留保買主等は所有権を有しませんが、現実の引き渡しを受け、即時にその動産を使用収益できます。

2.所有権留保の主な規定

 所有権留保には、譲渡担保の規定(コラム「新たな担保法制について」のその1からその4までで説明してきた譲渡担保に関する規定)が包括的に準用されますが、所有権の留保を第三者に対抗するためには、留保買主等から留保売主等への「引渡し」が必要になります。この対抗要件である「引渡し」は、狭義の所有権留保には適用されません。これについてはあとで説明します。
 また、設定者(留保買主等)に再生手続開始申立があったなどを解除事由とする特約は、無効とされています。

―牽連性担保権優先ルールについて―
(牽連性のある金銭債務のみを担保するための動産の譲渡の対抗力)
第31条 次に掲げる債務(その利息、違約金、動産譲渡担保権の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を含む。第37条において「牽連性のある金銭債務」という。)のみを担保するために締結された動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡は、譲渡担保動産の引渡しがなくても、第三者に対抗することができる。
①譲渡担保動産の代金の支払債務
②譲渡担保動産の代金の支払債務の債務者から委託を受けた者が当該代金の支払債務を履行したことによって生ずるその者の当該債務者に対する求償権に係る債務
2 前項の場合において、次条及び第35条から第37条までの規定の適用については、動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡の時に民法第183条に規定する方法(以下「占有改定」という。)以外の方法で当該動産の引渡しがあったものとみなす。

(動産の所有権の留保の対抗要件)
第109条 所有権留保契約に基づく動産の所有権の留保は、所有権留保動産の留保買主等から留保売主等への引渡し(登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない動産にあっては、留保売主等を所有者とする登記又は登録)がなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる債務(その利息、違約金、留保所有権の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を含む。)のみを担保するために締結された所有権留保契約に基づく動産の所有権の留保は、所有権留保動産(登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない動産を除く。以下この項において同じ。)の引渡しがなくても、第三者に対抗することができる。
①第2条第16号イに規定する所有権留保契約における所有権留保動産の代金の支払債 務
②第2条第16号ロに規定する所有権留保契約における償還債務(所有権留保動産の代金の支払債務を履行したことによって生ずるものに限る。)

 牽連性担保権優先ルールとは、被担保債権の一部が牽連性のある担保権(法31条1項1号、2号、法109条2項1号、2号にある代金債権等を担保する権利)である動産譲渡担保権・留保所有権は、原則として、対抗要件を具備しなくても、競合する他の担保権に優先します。そうしないと債務者に原材料等の動産を売る者が現れにくくなり、事業の継続が難しくなるからです。なお、狭義の所有権留保はこの牽連性ある担保権に該当します。
 ただし、このルールが適用されるためには、競合する他の担保権が占有改定以外の方法で対抗要件を具備するまでに、対抗要件を具備することが必要になります。
 牽連性担保権優先ルールは、占有改定劣後ルールとともに今回の新法制定の目玉でもあります。
 次回は牽連性担保権優先ルールについて詳しく解説したいと思います。


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